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思いを込めたお好み焼き

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食道癌末期のYさん、徐々に飲み込みが難しくなってきており素麺がやっと食べられる状態。
それでもテレビのグルメ番組を見ては、美味しそうと呟いています。
この前は、コロッケが食べたくなって、いつものお店のコロッケを食べてみた。
噛むまでは噛めるけど、飲み込めなかった。と残念そうに話していました。

ある時、訪看の看護師さんから、
「Yさんお好み焼きが食べたいそうなの。風月の海老玉が。なんとかならないかな…」
という連絡。

意識も食欲もしっかりしているYさん。なんとかなるだろうか、という思いでSTに相談です。
いつものようなゴーサインはなく、いつになく慎重な反応です。
私も少し不安になりましたが、注意事項などを確認して、お店に注文します。

お店には、
① 生地は少なめ
② キャベツは細かく
③ 天かすは多め
④ マヨネーズは付けず
⑤ カツオはなし
という非常に特殊なオーダー。
さらに、マヨネーズと牛乳、大根とだし汁を用意しました。
でき上ったお好み焼きを受け取り、Yさん宅へSTとともに訪問します。

STが口腔ケアで機能面の確認と食前の準備をします。
できたてほやほやのお好み焼きを目の前に、Yさんの歓声がひびきます。
「わー、美味しそう!!」

小さめに切ったお好み焼きを一口。
しっかりと咀嚼し、飲み込みます。
私たちはじっと息を飲んで見守ります。
「飲み込めたっ!」とYさん。
私はほっとして振り返ると、この話が出てからとても張り詰めた顔をしていたSTの顔に笑顔が…。

ここからは非常に専門的な話ですが、嚥下が弱い方には、粉もん(小麦粉)はどうしてもべたつきやすく、
のど詰め(窒息)をしやすくなります。パンや麺類も少し似ています。
咀嚼がしっかりできても粘りが強くて詰まりやすく、咀嚼が出来なければそのまま詰めてしまいます。
ターミナルという状況においては、
“ある程度の誤嚥はやむなし! 窒息を回避できればまずはok!”というくらいの前提で、
敢えてバラけやすく調理することは、非常に卓越した方法の一つになります。
さらに、大根おろしやだし汁を使ったり、マヨネーズも火が通ると固まりやすくなるので、
牛乳で伸ばして直前にかけたり、で対応をしてみようという作戦でした。
今回は幸いにも大根おろしや牛乳マヨネーズは必要ありませんでしたが、とても繊細な対応が必要でした。

それでも、これで安全という訳ではありません。
状況や状態によって、「何を優先するか」で対応は変わります。

この数日後、Yさんは亡くなられました。

私はお役に立てただろうか、自己満足に終わっていないだろうか…。
答えは聴けませんが、今日の訪問が明日につながるように、
これからも考え行動していきます。

RD.㎜

ナチュラルケアグループリクルートサイト

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